越境ECで「消費税還付」を受けられることをご存じでしょうか?
海外へ商品を販売する場合、日本の消費税は免税されます。というのも消費税というのは日本国内の消費にかかる税金なので国外で消費される商品に関しては、課税対象にはならないのです。
越境EC最大のメリットは余分に払った税金が戻ってくることです。実質的なコスト削減にも繋がります。消費税還付を知らずに越境ECに取り組むと損をすることになります。ただし、誰でも還付を受けられるわけではありません。消費税還付を受けるのに必要な条件があります。
今回は、越境EC事業者が知っておくべき「消費税還付」について、基本的なことから条件や申請方法まで徹底的に解説します。
そもそも越境ECとは
「消費税還付」を解説する前に、まず越境ECについて解説します。
越境ECとは、インターネットを利用して海外の消費者に商品を販売する電子商取引(Electronic Commerce)のことです。円安の影響やインバウンドからのリピート需要の高まりにより、インターネットで手軽に商品を購入できる越境ECが人気になりました。
越境ECに参入する企業は増加傾向にあり、経済産業省が、2022年8月に発表した『令和3年度電子商取引に関する市場調査』の報告書によると、2026年には4兆8,200億ドルにまで拡大すると予測されています。
画像:令和3年度電子商取引に関する市場調査をもとに作成
越境ECでは消費税は免除される
越境ECでは、消費税は免除されます。
そもそも消費税とは、日本国内の消費にかかる「内国税」です。海外で消費される商品に関しては課税対象にはなりません。もし輸出した先の国で消費税がある場合、海外の消費者に対して日本の消費税も適用してしまうと「消費税の二重取り」になってしまいます。
空港の免税店で消費税がかからないのはこの理由です。出国審査後の空港免税店の店頭価格は、海外で消費される商品と想定されているため事前に消費税額を差し引いた状態で販売されています。
越境EC最大のメリットである消費税還付とは?
消費税還付とは、商品やサービスが海外で消費される場合、すでに仕入れ時に払った消費税を返金(還付)してもらえる制度です。消費税還付は、越境EC事業者の最大のメリットであり実質的なコスト削減にも繋がるため活用しないと損をします。
日本国内で商品を仕入れた際は消費税を含めた金額で仕入れを行います。ところが、消費税還付の手続きを行うことで、その仕入れ先に払った消費税を返金してもらうことが可能です。
例えば、A社が仕入れ先から1,000円で仕入れた商品が、越境ECで2,000円で売れたとします。
A社は1000円で国内から商品を仕入れた場合、仕入れ先へ支払う消費税は100円です。しかし、消費税還付で仕入れ先に支払った「100円」の消費税は、還付額として返金してもらうことが出来るのです。
また、仕入れにかかった消費税のほかに、商品の梱包などの発送業務にかかる資材などの消費税も還付してもらうことが出来ます。
越境ECの消費税還付を受けるための条件
消費税還付は申請したからといって誰でも受けられるわけではありません。消費税還付を受けるには必要な条件があります。ここからは消費税還付を受けるための条件について解説していきます。
【条件1】 消費税課税事業者であること
消費税を納める方法として、消費税を税務署に収める必要がある「課税事業者」と、消費税を税務署に収める必要がない「免税事業者」の2種類があります。
まず前提として、消費税還付を受けるには「課税事業者」になる必要があります。
下記に当てはまると、課税事業者となります。
- 前々年度の売上高が1,000万円を超える法人
- 前々年度の課税売上高が1,000万円を超える個人事業者
- 課税事業者になることを選択した事業主
- 資本金・出資金が1,000万以上の法人
※参考:免税事業者と仕入税額の還付
新たに法人を設立したり、開業届けを提出したばかりの個人事業主は、前々年度の売上履歴がないため消費税還付を受ける条件を満たしません。
ただし、資本金・出資金が1,000万円を超えている場合や、事業開始時に「課税事業者選択届出書」を税務署に提出することで、消費税還付を受けられる対象になることが可能です。越境EC事業者の法人になる場合は、始めから課税事業者になっておくことがおすすめです。
【条件2】原則課税を選択している
課税事業者には、納める消費税の計算方式が2種類あります。
- 原則課税方式(預かった消費税ー預けた消費税)
- 簡易課税方式(預かった消費税×10%〜15%)
消費税還付を受けるには「原則課税方式」を選択していることが前提です。
原則課税とは「売上額(預かった消費税)」と「仕入れ額(預けた消費税)」で計算します。
一方、簡易課税は「売上額(預かった消費税)」と「みなし仕入れ率」をかけて計算する簡単な方法です。
原則課税
売上に含まれる消費税は0円です。消費税よりも、仕入れに含まれる消費税の方が多くなるため、仕入れに含まれる消費税が還付されることになります。
簡易課税
しかし、簡易課税だとマイナスにならず還付額が発生しないため還付もありません。
そういった理由から、簡易課税を選択している場合は、消費税の還付を受けることが出来ないため注意しましょう。
【条件3】還付申請書類を期限までに提出すること
消費税還付の申請期間は課税期間末日から2ヶ月以内、個人事業者の場合は課税期間の翌年3月末までです。それまでに必要な書類を揃えて、必ず期限内に提出するようにしましょう。
越境ECの消費税還付の手続き方法
ここからは、消費税還付を受け取るための手続きの流れを解説していきます。
必要書類を用意する
まずは、下記3つの書類が必要です。
- 課税期間分の消費税・地方消費税の確定申告書
- 仕入控除税額に関する明細書類(法人用)
- 課税売上割合・控除対象仕入税額などの計算書
上記以外にも、越境ECによる海外へ商品を発送したことが分かる書類や、輸出許可書、消費税額を含めた仕入れを行っていることを証明する納品書、請求書、領収書などの帳簿も必要です。
還付金を申請する
書類が揃ったら、事業者の住民票が所在する税務署へ提出しましょう。申告書の記載内容や書類のチェックに時間がかかるため、還付金が支払われるのは2~3ヶ月後となります。
還付金を早く受け取りたい場合は、e-Tax(電子申告)で必要書類を提出してみて下さい。本来であれば2~3ヶ月かかりますが、2週間程度に短縮できます。
還付金を受け取る
還付金の受け取りには、確定申告で指定した預金口座、もしくはゆうちょ銀行(または郵便局)で直接受け取る方法のどちらかを選択可能です。
預金口座へ振り込む場合、申告者本人もしくは納税管理人名義の口座へ還付金が振り込まれます。法人の屋号名を口座名に設定していた場合は振り込みが行われない可能性があるので、注意して下さい。
越境ECの消費税の還付期間
消費税還付は通常は、年一回の確定申告の際に行うのですが、事前に手続きを行うことで、毎月もしくは4ヶ月毎に消費税還付を受けることが可能です。
年1回の消費税還付と比べ、消費税還付の受け取り回数を増やすことで、新たな商品の仕入れに費用に回すことができるなど資金繰りが安定します。ただし、その度に書類の準備や申請手続きが必要なので手間がかかるなどのデメリットがあります。
還付回数を増やすには「消費税課税期間の特例選択届出書」を提出する必要があります。
越境ECの消費税還付の注意点
それでは、最後に越境ECの消費税還付における注意点を確認しておきましょう。
申請に必要な書類は無くさず保管する
越境ECで消費税還付を受ける場合、税務署から電話などの調査が入るリスクが高くなります。クラウド会計サービスの利用や税理士に委託するなど、税金の計算はしっかり行っておきましょう。
また、海外へ商品を発送したことが分かる書類や、輸出許可書、インボイス、消費税額を含めた仕入れを行っていることを証明する納品書、請求書、領収書などの帳簿は、なくさないように保管しておきましょう。これらの書類の中には、期限を過ぎてしまうと再度入手できなくなるものもありますので注意が必要です。
越境ECでは、発送する商品代金が総額20万円以下の場合、輸出申告が不要なため輸出許可書が発行されません。その場合、輸出許可書の代わりにインボイスで代用することが可能です。
還付金が支払われるまで時間がかかる
本記事内で何度もお伝えしていますが、還付の申請から実際に振り込まれるまで2~3ヶ月程度かかります。越境ECを事業者さまにとって、消費税還付は収入源のひとつです。できるだけ早めに書類を揃えて申請を行いましょう。早く受け取りたい場合は、e-Tax(電子申告)で申請すると2週間ほど短縮できます。
まとめ
今回は、越境EC事業者が知っておきたい「消費税還付」について、基本的なことから条件や申請方法などを解説させて頂きました。
消費税還付は、越境EC事業者の最大のメリットとなります。中小企業や個人事業者の方にとっては還付金の存在は大きく、知っているのと知らないのとでは「大きな損失」に繋がります。
越境ECをこれから始めようとする場合、消費税について正しく理解しておく必要があります。また還付を受けれらるかどうかは事業者さまの状況によって異なりますが、いつでも還付金の申請が行えるように準備しておくことをおすすめします。